本研究では、親水性および疎水性側鎖を有するポルフィリン共役ポリマーを合成し、気水界面での単分子膜作製および水中ゲストの効率的な分子認識を達成することを目的とした。本年度は、ポルフィリンZn錯体誘導体の合成を完了し、気水界面での単分子膜形成能と水中ゲスト分子の補足効率を評価した。また、ポルフィリンと同様に電子豊富な共役高分子ナノワイヤおよび剛直なポリメチレン型高分子ナノワイヤも合成し、比較試料とした。 両親媒性ポルフィリンZn錯体のπ-A曲線は非常に安定な単分子膜形成を示唆した。モデル化合物で用いたサイクレン錯体と異なり、可視領域に強い吸収があるため容易にゲスト分子認識挙動を評価できる。水溶性のピリジン誘導体ゲストを溶かした水面上で認識挙動を調査したところ、圧力の増加と共にポルフィリン共役平面は水面に平行配向して安定な単分子膜を形成した。この様子は、ゲスト分子の吸収強度変化から定量的に見積もることができた。 また、ポルフィリンと同様の電子豊富共役系として共役平面が大きく化学修飾が容易なカルバゾールを選択した。連結位置を変えたカルバゾールナノワイヤを各種合成し、吸収波長から電子状態を評価した。カルバゾール窒素に様々な置換基を導入できるため、ゲスト分子認識能を付与する設計も可能であった。 さらに、共役電子系は有していないが、剛直な脂肪族主鎖からなるポリフマル酸誘導体も合成して、気水界面での単分子膜形成能を調査した。高密度に配置された側鎖間の相互作用のために非常に安定な単分子膜を形成できることが明らかとなった。ビニル型ポリマーは優れた単分子膜形成能を示さないため、適当な側鎖置換基を有する剛直ナノワイヤ構造が重要であることを示している。
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