研究概要 |
液晶コロイド中に自己組織的に構築されるコロイド超構造の光制御において基盤技術となる配向欠陥の光変調について,アゾベンゼン誘導体のトランス⇔シス光異性化反応を用いて検討した。コロイド粒子には,水の液滴(以下,水ドロップレット)を用いた。コロイド粒子を分散させるホスト液晶には,分子末端がイオン化されたアゾベンゼン誘導体(以下,イオン化アゾベンゼン誘導体)を混合した低分子ネマチック液晶を用いた。イオン化アゾベンゼン誘導体を用いることによってこれまでに報告されていない配向欠陥構造が水ドロップレット周りに形成されることを発見した。この配向欠陥構造は,Hedgehogに類似した構造(Hedgehog-like)であることを明らかにした。既に配向欠陥制御として,「Saturn ring⇔Boojums」転移をこれまでに達成しているが,今回発見した新しい配向欠陥構造に紫外光および可視光を照射し,水ドロップレット表面に吸着したイオン化アゾベンゼン誘導体の光異性化反応を誘起することによって,「Hedgehog-like⇔Boojums」構造光制御を達成した。また,用いるイオン化アゾベンゼン誘導体の構造を変化させ,水ドロップレット表面において液晶分子を垂直に配向させようとする力を増強することによって,完全なHedgehogを観察することもできた。この場合には,Hedgehogは光照射によってBoojumsへと構造変化することはなく,Hedgehogの大きさが可逆的に変化した。この光による欠陥構造の可逆変化を利用することによって,水ドロップレットが一次元に連結した鎖状構造において,コロイド超構造の光制御の一つであるドロップレット間距離の可逆的な光制御を達成した。
|