研究課題
平成18年度は、水素結合を利用したナノ構造体制御を積極的に利用することを目的に、カルボン酸の数や置換位置の異なるポルフィリンを用い、その表面構造を水溶液中でSTM観察することによって、ナノ構造形成の評価をおこなった。カルボン酸同士による水素結合形成が期待されたが、これまでのところ、明瞭なナノ構造体の形成の確認は出来ていない。これは、1.分子の吸着密度が高すぎる、2.無金属ポルフィリン誘導体を用いたため、1分子の識別が難しいことが上げられる。またカルボン酸間にコバルトイオンを溶液中から挿入することも試みた。今までのところ、金属配位結合の形成は確認出来ていないが、無金属ポルフィリンの中心部への配位の可能性が示された。一方、アミド結合を有するコバルトイオンが配位したピケットフェンスポルフィリンについて、その分子間相互作用を反映したベルト状の特徴的なナノ構造体が形成されることを見出した。これらのナノベルトのサイズや形状、さらに、酸素の配位する状況は下地の金の原子配列にも依存することを分子レベルで明らかにすることが出来た。この結果は、ポルフィリンの官能基を修飾することで、3次元方向への機能付与の可能性を示している。また合成によって希土類金属イオンを介して3次元的に積み重なったトリプルデッカー分子についても、酸性の溶液中で表面構造の分子レベル解析を行い、金表面での2次元的な規則正しいナノ構造体の形成によって、積み重なった構成分子の内部構造の解像に成功し、また電気化学的なポテンシャルによって、表面構造の変化を生じることを明らかにした。なお、前課題(16750106)について、追実験を行うことにより、コロネン単分子膜と種々のフラーレン分子の異種分子界面の構築に関する成果を学術雑誌へ発表した。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (3件)
Langmuir 46(7)
ページ: 1071-1074
Angew. Chem., Int Ed. 129(14)
ページ: 4366-4376
J. Am. Chem. Soc. 23(2)
ページ: 809-816