研究概要 |
18年度の研究成果より疎水性部位として長鎖アルキル基を導入したアルドラーゼ型有機分子触媒は水媒体中でも高収率、高立体選択的に不斉アルドール反応を進行させることを可能にした。さらに、マイケル反応においても飽和食塩水や海水を反応媒体に用いることにより、高収率、高立体選択性を達成した。また、19年度の研究成果より長鎖カルボン酸が長鎖アルキル基により反応場を形成し、さらにカルボン酸部位によりエナミン生成を活性化し、この二つの役割を同時に満たす結果、1 mol%の触媒量でもアルドール反応が円滑に進行することを見出した。20年度はシクロアルカノンと水溶性ホルムアルデヒドの直接的アルドール反応を検討し、これまで困難であった5員環ケトンのヒドロキシメチル化を高収率、高エナンチオ選択性を達成した。触媒としてL-トレオニンが適しており、5員環だけでなく、6, 7, 8員環ケトンにおいても高エナンチオ選択的に反応が進行した。一般的に、一級アミンを触媒として用いた場合、イミンの生成が触媒活性を減少させる。しかし、L-トレオニンを用いた場合、分子内水素結合によりイミンの生成が抑制され、効率的にアルドール反応が進行したと考えられる。得られたアルドール生成物をBaeyer-Villiger反応により香料や医薬中間体となる光学活性ラクトンへと変換した。また、最適触媒、最適条件を迅速に評価するために、化学結合形成により蛍光がOFFからONになる化学反応追跡用蛍光センサーの開発を行った。現在、アルデヒド基とケトン基に対して、蛍光がOFFからONになるセンサーの開発に成功している。
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