現在のバイオプラスチックリサイクルシステムでは、まず、二酸化炭素を出発原料として3ステップあるいは2ステップ生産法により、バイオプラスチックが生産される。使用後のバイオプラスチックは、環境微生物の作用により二酸化炭素と水に分解され、再生可能なバイオマスに変換される。近年、バイオリサイクルに加え、ポリマーを直接の原料であるモノマーにまで分解(原料化)し、再重合するケミカルリサイクルが注目されている。特に、酵素を用いたケミカルリサイクルでは、化学法に比べ温和な条件で重合が行え、触媒由来の金属が含まれないなど環境低負荷型のリサイクルシステムであると考えられる。しかし酵素触媒法は、酵素の可逆反応性のため重合と同時に分解反応が生じることから、再生プラスチックの高分子量化が難しい点や多分散度が大きくなる欠点を有する上、リサイクルには最低2ステップ以上が必要となる。そこで本研究では、1ステップかつ再生プラスチックの高分子量化(高性能化)が期待できるバイオプラスチックリサイクルシステムの構築を目指す。 代表的なバイオプラスチックであるポリヒドロキシブタン酸(PHB)を原料とした1ステップバイオリサイクルシステムを目指すためには、高選択・高効率なPHB分解系の構築が重要となる。そこで平成18年度は、まず、PHB分解酵素による高選択・高効率な分解系の構築を行った。宿主として操作性の良い大腸菌を用い、R.pickettii T1由来のPHB分解酵素遺伝子を有するプラスミドで宿主を形質転換し、分解酵素を発現できる系を構築した。組み換え大腸菌の性質を調べたところ、分解酵素を発現させた大腸菌は、PHBに対して高い特異性を有していることが示唆された。
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