研究課題
タンパク質の熱に対する耐性を向上させる溶液をデザインするために、溶液に添加する新しい化合物を探索した。これまでに得られていた最良の化合物はアミノ酸アルキルエステルやポリアミンだったが、リゾチームの熱凝集をモデルに調べたところ、アルギニンアミドを新しい添加剤として見いだした。アルギニンアミドはアルギニンエチルエステルと比較して、加水分解をうけにくいこと、凝集抑制能がアルギニンエチルエステル以上の効果を示すこと、リフォールディング添加剤としても優れた効果があることが判明した。ただしアルギニンアミドは高価だという欠点が残されている。さらにリゾチームをモデルタンパク質に熱失活耐性を向上させる添加剤を探索したところ、アルギニンアミドに限らずアミノ酸アミドに広く効果がみられることがわかった。0.1Mほど添加すると熱に対して完全に凝集を抑制するバリンアミドやメチオニンアミドは、タンパク質溶液をデザインする上であたらしい選択肢になるだろう。熱凝集を抑制する溶液とリフォールディングを助ける溶液は、タイプが違うことも分かってきた。例えばタンパク質の熱凝集抑制剤であるポリアミンはリフォールディング収率を上げない。アルギニンタイプの化合物にリフォールディング収率を増加させる効果があるのではないかと考えて、次年度に系統的に調べていく必要があると考えている。タンパク質の熱による凝集という速度論的な現象が、溶解度という平衡論的な指標で評価できることが分かりつつある。さまざまな塩を添加した溶液でのリゾチームの加熱凝集を調べたところ、溶解度を低下させる塩は凝集を促進する。タンパク質溶液にはふつう、塩を添加するので、理想的な塩が存在するのかどうかについても、さらに系統的に調べていき、タンパク質の凝集や失活を抑制する溶液デザイン法を確立していきたい。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (In press)
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生物工学 84
ページ: 395-397