本研究は、mRNAの形成している高次構造を解消しながら、相補的配列に配列特異的に結合することができる新規人工核酸分子の創製を目指している。本研究で、標的としている新規人工核酸分子は、人工DNA鎖の途中の部分から分岐した形でPNA分子が延長した構造をしている。分岐部分の構造は、デオキシウリジンの5位にカルボキシメチル基を導入したヌクレオシド類縁体を用い、ここにヘキサメチレンリンカーを介してPNA鎖を連結するようになっている。 初年度である平成18年度は、この新規人工核酸の合成法の構築を目指した。まず分岐部分となる修飾ヌクレオシド前駆体として、5位にリンカーであるアミノヘキシル基をもつデオキシウリジンの合成を行った。これを常法に従ってDNA自動合成機に適用可能なホスホロアミダイト体として、DNA鎖の中央部分に5位にアミノヘキシルカルバモイルメチル化されたデオキシウリジンを含む人工DNAを合成した。一方、PNA部分は文献の方法に従って、骨格部分であるアミノ基をBoc基で保護したアミノエチルグリシン誘導体を合成し、続いて塩基部分と縮合することでPNAモノマーを合成した。PNAオリゴマーはWang樹脂を担体として用いて、縮合剤としてHBTUを用いてマニュアルで合成を行った。合成したPNAオリゴマーは塩基部位の保護基は除去せず、弱アルカリで樹脂から切り出すことで、保護基を残した状態でのPNAオリゴマーを得た。これらの構造はMALDI-TOF massで構造を確認した。 DNAオリゴマーはリンカー部分であるアミノヘキシル基の保護基であるFmoc基のみピペリジンで処理して除去を行い、種々PNAオリゴマーとの縮合を検討した。しかし、種々の縮合剤を用いたが、目的物を得ることができなかった。 次年度は、DNAの固相担体などを含めて縮合条件の検討を行う予定である。
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