研究概要 |
本年度は、立体化学的に純粋なヌクレオシド3'-O-オキサザホスホリジンモノマーユニット(1)の合成法の開発、及びリン原子の絶対立体配置を制御したH-ホスホネートインターヌクレオチド結合の効率的構築法確立の2点を達成した。まず、光学的に純粋なα,α-二置換-2-ピロリジンメタノールを三塩化リンと反応させた後、適切に保護したヌクレオシドの3'-OHと反応させることによって1を合成した。2-ピロリジンメタノールのα位の置換基R^1,R^2として、R^1=Me,R^2=Me(1a)、R^1=Me, R^2=Ph(1b)、R^1=Ph, R^2=Ph(1c)の3種類について検討したところ、速度論的条件下、いずれの場合も高いジアステレオ選択性でモノマーユニットを与えることが分かった(1a : d.r.=98:2 ; 1b,c : d.r=>99:1)。 次に、得られたモノマーユニットのP-N結合を、N-(シアノメチル)ピロリジニウムトリフラートによって活性化し、固相担体に担持したヌクレオシドの5'-OHと縮合した後、生じたホスファイト中間体をトリフルオロ酢酸処理によってH-ホスホネート中間体へと変換した。1cの場合、縮合反応の収率、立体選択性が低く、1aの場合H-ホスホネートへの変換反応の際副反応が観測された。これに対し、1bを用いた場合、97%以上の高収率で縮合反応が進行し、かつ立体化学的に純粋なH-ホスホネートインターヌクレオチド結合に変換できることを見出した。更に、得られたH-ホスホネート結合を立体特異的にホスホロチオエートジエステル、ボラノホスフェートジエステル、ホスホロアミデートジエステルに変換できることも確認した。 この様に、オリゴマー合成に十分な効率でH-ホスホネート結合の合成に成功したので、今後様々なリン原子修飾DNAオリゴマーを合成し、その性質に関する詳細な検討を行なう。
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