研究代表者らは平成18年度の研究において、ヌクレオシド3'-O-オキサザホスホリジン誘導体を用いるH-ホスホネートインターヌクレオチド結合の高立体選択的合成法の開発に成功した。平成19年度の研究では、この手法を固相法によるオリゴマー合成へと応用し、固相担体上において、リン原子の絶対立体配置を厳密に制御したH-ホスホネートDNAのオリゴマーを合成することに成功した。これは、立体化学的に純粋なH-ホスホネートDNAオリゴマーの初めての合成例であり、極めて画期的な実験結果と言える。このH-ホスホネートDNAオリゴマーは化学的に不安定であり、そのままでの単離精製は困難であるが、リン原子に対して更なる修飾を施すことによって、立体化学的な純度を保ったまま、種々のリン原子修飾DNA類縁体へと変換できることが期待される。そこで、固相担体上で立体化学的に純粋なジチミジンH-ホスホネートを合成し、リン原子の修飾反応に関する検討を行ったところ、リン原子上に硫黄原子(ホスホロチオエート型)、窒素原子(ホスホロアミデート型)、ホウ素原子(ボラノホスフェート型)、ヒドロキシメチル基(ヒドロキシメチルホスホネート型)を導入したリン原子修飾DNA類縁体について、収率84-95%、立体選択性〓99:1で合成することができた。これらリン原子修飾DNA類縁体の内、ホスホロチオエート型を除く3種に関しては、既存の手法では立体化学的に純粋な形での入手が極めて困難である。本研究の成果を受けて、今後、これらを核酸医薬として応用する研究への展開が期待される。
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