本研究は、10万塩基対以上の細菌のゲノムDNAを迅速かつ高純度で化学合成することを最終目的としている。汎用されているホスホロアミダイトDNA合成では、固相担体上に一塩基ずつ鎖伸長を行い、目的のオリゴヌクレオチドを得ている。数十量体のDNAオリゴマーであれば、迅速かつ高純度で安定供給が可能であるが、数百量体のDNAオリゴマーになると鎖伸長効率やデプリネーションの問題から化学合成が困難である。そこで、安定供給できる50〜100量体の合成DNAオリゴマーを縮合ブロックとし、固相担体上でフラグメント合成を行うことで、10万塩基以上のDNA鎖の合成を目指して研究を進めてきた。 長鎖DNAオリゴマー同士の縮合効率を極限まで高めるために、強い磁性をもつナノビーズを用いたDNA合成の検討をおこなった。この磁性ビーズは粒径が200nmと非常に小さく、DNA固相合成の固相担体として汎用されてCPG(粒径200μm)を用いた縮合よりも分子の衝突確率を高めると期待される。このナノビーズに担持したチミジンの5'水酸基を遊離にした後、3'ホスホロアミダイトユニットを用いて縮合をおこなったところ、非常に高い縮合効率ならびに単離収率で目的のTpTダイマーの合成に成功した。次に、この手法を長鎖のオリゴマー合成に応用するために、DNAオリゴマーのホスホロアミダイトユニットへの変換を試みた。当研究室で開発した中性条件下除去可能なシリルリンカーを用いて、リン酸基の保護基をのこしたDNAオリゴマーを合成し、ホスホロアミダイト化をおこなった。しかし、長鎖のDNAホスホロアミダイト化合物は容易に加水分解を受けてしまうため、単離精製が非常に困難であった。現在は、縮合ユニットをホスホロアミダイト体から、化学的に非常に安定なH-ホスホネート体へと変更し、長鎖DNA縮合ブッロクの合成とそれを用いた縮合条件の検討を行っている。
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