本研究では、生体内のCaシグナルと関連したタンパク質発現と細胞機能を解明するためのプローブ分子として、塩基配列認識部位を自在に設計でき、かつ、Caセンサー機能を有する人工転写因子の創製を目指して研究を行った。本年度は、Caセンサー型転写因子の基盤タンパク質の調整を行った。すでに申請者は、ジンクフィンガーZif268を参考に、2つのフィンガーユニットのC端にCa結合タンパク質であるトロポニンCのヘリックスーターンーヘリックスのターン部分以降のモチーフをカップリングした、フユージョンタンパク質FlF2-Tnが、Caイオン存在下では、DNAとの結合が低下することを明らかにした。分子モデリングの結果を踏まえ、Ca結合によってフレキシブルなループ部分の構造変化によってDNAとの立体障害を引き起こす機構のためと考え、このような構造変化による結合阻害が大きくなるような変異を導入したタンパク質の大腸菌での発現系の構築を行った。目的のタンパク質をコードするDNA断片を用意し、これをマルトース結合タンパク質とのフユージョンタンパク質として発現するようにプラスミドに導入した。形質転換後の大腸菌BL21の培養条件、誘導条件の最適化を行った。また、ライセートから可溶性画分を、アミロースレジン及びヘパリンセファロースによるアフィニティーカラムクロマトグラフィー、次いで、DEAEカラムによる陰イオンカラムクロマトグラフィーによる最終精製標品を得る精製段階を確立した。同様に、DNAの認識部位が異なる変異タンパク質についても大量発現及び精製を行った。
|