本研究の目的は従来にないスピン状態や電子配置を持つ高原子価金属錯体を合成し、それが従来とは異なる触媒機能を持つ「スピン制御触媒」を構築することである。ポルフィリン金属錯体におけるポルフィリン環の変型様式、配位構造及び軸配位子の特性を制御することによって、高原子価金属ポルフィリン錯体の電子状態を制御することが可能である。この性質を利用することができれば従来にない「スピン制御触媒」を構築することが可能である. 従来とはスピン状態と電子配置が異なる-電子酸化低スピン高原子価ポルフィリン鉄錯体の構築に成功し、その電子状態を明らかにすることに成功した。ポルフィリン環が著しくラッフル変形したポルフィリン鉄錯体の合成に成功した. この錯体は従来と異なる鉄-ポルフィリン軌道間相互作用が期待される。そのため、電子配置とスピン状態が従来型と異なる可能性が高い。スピン制御触媒を行う上で重要な錯体を得ることに成功した。この錯体は国際的に興味を持たれた化合物であるが、合成困難なことから報告例がなかった。この錯体は低収率であり、合成条件を精密化する必要がある。2電子酸化体で軸配位子の制御を試みた結果、従来とは異なるNMRスペクトルが観測された。電子配置が逆転した新しい高原子価の可能性があるが、詳細に検討する必要がある.通常、反磁性であるポルフィリンクロム(IV)オキソ錯体の軸位を制御することによって、常磁性と思われるNMRスペクトルが得られた。本年度の研究で、2電子酸化体及びクロム錯体の電子配置の逆転の可能性が示唆された。実際に、高原子価でスピン状態を変えることができる可能性を本研究で示すことができた。本目的であるスピン制御触媒の実現可能性が高まった。
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