前回まで、蛋白質と化学反応することで蛍光発生する分子プローブの開発を目指していたが、蛋白質との化学反応性が低いプローブしか得られず、その開発は難しかった。一方、我々は遺伝子検出プローブとして、最近開発した分子は1分子内での蛍光のon/offが可能であり、蛋白質検出にも応用可能であることが期待された。この分子はアジドメチル基を持ち、トリフェニルボスフィン等の還元剤によってアジド基が還元されることにより構造変化が起こり蛍光を発することが可能となる。 今回、アジドメチル基を有する蛍光分子をもちいた化学反応を引金とする蛍光発光システムによるタンパク質およびペプチド検出を試みた。標的として17merからなるヒトHIV-1 Revタンパク質のarginine-rich motif(ARM)を選択した。ヒトHIV-1 Rev ARMペプチドには35merからなるRNAアプタマーが結合することがこれまでに報告されている。そこでこのRNAアプタマー配列を2分割し、ペプチド検出用プローブとすることにした。配列の異なる2種類のプローブのうち、一方にはアジドメチル基を有する蛍光分子を結合させ、もう一方のプローブには還元剤であるトリフェニルホスフィン基を導入した。この2種類のプローブを用いることで溶液中のRev ARMペプチドの検出を試みた。50mM Tris-HC1溶液中37℃で30分間反応させた結果、Rev ARMペプチド存在下の場合、非存在下の場合と比較してその蛍光強度が約25倍に増強することが示された。
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