リチウム二次電池用炭素負極において電池反応は炭素電極、表面被膜、電解質が関係した複雑な電極/電解質界面で進行する。そのため、各要素が電極反応速度に与える影響を明らかにすることで高出入力化などリチウム二次電池の高性能化の指針を与えることが可能になると期待される。そこで、本研究では炭素電極として結着剤の影響を受けないバインダーフリーな炭素薄膜電極を用い、上記の三要素のうち表面被膜に着目して表面被膜が電極反応速度に与える影響を明らかにすることを目的とした。本年度の成果概要は以下の通りである。 1、アセチレンを炭素源としたプラズマ化学気相析出法(プラズマCVD法)により種々の条件で炭素薄膜電極を作製した。いずれの炭素薄膜電極も電気化学的にリチウムイオンの挿入脱離が可能であり、炭素負極のモデル材料として使用できることが分かった。 2、得られた炭素薄膜電極を用いて電極/電解質界面におけるリチウムイオン移動の活性化エネルギーを交流インピーダンス測定により求めた。表面被膜形成用の電解液に主溶媒としてEC、共溶媒としてDECあるいはDMCを用いてサイクリックボルタンメトリーにより表面被膜を形成した。その後、種々の電解液を用いて活性化エネルギーを求めた。 その結果、共溶媒が異なると同じ電解液を用いても活性化エネルギーが異なる場合があることが分かった。これは表面被膜の特性が原料により異なり、表面被膜と電解質の組み合わせ次第で、電極/電解質界面でのリチウムイオン移動に表面被膜も何らかの影響を与えることを示唆している。
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