研究概要 |
Acceptor分子として優れるフッ素化フラーレン(C_<60>F_<36>)と電荷移動型分子(CT)を形成させるため、donor分子として環状カルバゾールオリゴマー(cyclic oligomer)の合成を試みた。フラーレン(C_<60>, C_<60>F_<36>)と環状カルバゾール分子は、混合した場合その構造から交互に積層した構造をとることが予想される。よって光吸収によって発生・分離したキャリアが阻害されることなく電極から取り出せるようになり、高効率の構造化太陽電池の材料として利用できることが期待される。 本年度の研究ではカラムクロマトグラフィーと高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を駆使することで3量体の精製を達成し、続いて目的物質であるcyclic oligomerの合成に成功した(TOF-MSによって確認)。しかし、生成物には目的物質のほかにもPt金属触媒・原料である単量体と3量体・8個のカルバゾールが環を形成する大型の環状分子など多数の副生成物が混在していたため、cyclic oligomerとこれら副生成物の分離・精製は非常に困難であったが、HPLCによる繰り返し分離を行ったこと・目的物質と副生成物の有機溶媒への溶解度の差を利用した分離に成功したことにより、ほぼ純粋なcyclic oligomerの精製に成功した。これは^1H-NMRにおいて目的物質の鋭いピークが得られたことから確かめられた。 現在精製の完了したcyclic oligomerについて、(1)結晶性の有無(X線構造解析のため)・(2)紫外可視吸光度測定による単量体と3量体、cyclic oligomerの電子構造の比較・(3)固体(膜)状態における構造の検討(スタッキング構造の有無)・(4)C_<60>と混合した場合のCT形成の有無(溶液状態・膜状態ともに)についての実験を進めている。
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