以下に、有機EL用蛍光性色素および色素増感太陽電池用色素として、新しい複素多環系色素の開発に関する研究成果についてまとめた。 1.オキサゾロカルバゾール系蛍光性色素の固体蛍光性と有機EL特性 新規なオキサゾロカルバゾール系蛍光性色素3aと4aをN-アルキル化した誘導体3b-3dと4b-4dを合成し、固体状態での蛍光発光性について調べた。固体状態での蛍光発光強度は、3d(φ=0.22)>3c(φ=0.20)>4d(φ=0.17)>4c(φ=0.13)>4b(φ=0.11)〓3b(φ=0.10)≫4a(φ=0.03)≫3a(φ=-)の順に増大した。以上の結果から、N-アルキル化によって色素間の分子間相互作用が緩和され、色素3と4の固体蛍光性が著しく改善されることがわかった。色素3aと3dを発光体として用いたEL素子の測定結果を基に、固体発光性とEL特性の相関性を明らかにした。 2.Donor-π-Acceptor型増感色素の配向制御と色素増感太陽電池の光電変換特性 カルボキシル基の結合位置を様々に変化させた新規なオキサゾール系蛍光性色素5a-5dをを用いた色素増感太陽電池を作製し、IPCE測定を行った結果、色素5a-5dで光電変換効率(η)に大きな相違が見られた。カルボキジル基が色素骨格に非当役的に結合した色素5bのη値は、カルボキシル基が色素骨格に共役的に結合した色素5aのη値と同程度であった。色素5bの高い光電変換特性は、色素のアクセプター部位(シアノ基)がTiO_2表面に接近することで、効率的な電子注入達成された結果であると考えられる。以上の結果から、TiO_2電極上での増感色素の配向性は、色素増感太陽電池の光電変換特性に強く影響を及ぼすことがわかった。
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