磁場により大きく弾性率を変化させることのできる高分子ゲルを創製した。磁性微粒子を高濃度に含む高分子ゲルは1万分の1のわずかな歪みで非線形粘弾性を示し、弾性率は急激に減少した。磁場を印加すると弾性率は大きく減少した。磁性微粒子が磁化され、微粒子間には磁気的な相互作用が働き、ゲル内部に歪みが誘発されたと考えられる。また、磁化させるとゲルは異方的に変形することが本研究で初めてわかった(磁歪現象)。磁性ゲルの弾性率の減少量は10MPaにも及んだ。バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、四三酸化鉄を用い、これまでに成功しているκカラギーナンゲルをマトリクスとする磁性ゲルを合成し、同様に巨大磁気弾性効果を検証した。全てのゲルでMPaオーダーの弾性率減少を示した。弾性率減少に及ぼすマトリクスの効果について調べた。カラギーナンのほかに寒天でも同様の現象が発現することがわかった。寒天をマトリクスとするゲルでは、ゲル化時の冷却速度が巨大磁気弾性効果に影響を与える。粒子の分散状況が冷却速度に依存すると考えられる。また、寒天ゲルの磁歪の大きさはカラギーナンゲルよりも遥かに小さかった。動的粘弾性を測定するとき、磁場を印加できるように磁場印加装置(マグネットおよび直流電源)、レオメータの非磁性の治具を設計したが、最大磁場強度や磁場強度分布に問題があり、装置は作成できなかった。以上の実験から、巨大磁気弾性効果のメカニズムをほぼ解明した。
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