研究概要 |
耐熱性、耐薬品性に優れた芳香族ポリエーテルケトン鎖からなるはしご状高分子の合成法の開発を目的に研究を展開した。さらに、光学活性な大環状構造を有するはしご状高分子への展開を図るため、はしご状高分子の網目部分に光学活性単位で1,1'-ビナフチル-2,2'-ジオキシ単位の導入を試みた。本年度検討したことは、以下の三点である。 まず第一に、芳香族エーテルケトン鎖からなるオリゴマーあるいは高分子の環化反応によるはしご状高分子の合成検討を行った。しかし、最初のステップである重合段階において環化反応が競争して起こり、目的とする環前駆体を単離することができなかった。そのため、このルートを断念した。 第二に、段階的網目構築反応によるはしご状高分子の合成検討を行った。p-ターフェニル骨格を有する四官能性フルオロ化合物とフッ化物との求核置換反応、ベンゼンジホウ酸との鈴木カップリング環化反応を行うことで、はしご状高分子の部分構造である二環性化合物が得られた。得られた高分子は溶解性が低い、収率が低いという問題があるため、分子設計の変更、反応設計の最適化がさらに必要である。 第三に、軸不斉単位である1,1'-ビナフチル-2,2'-ジオキシ単位を含む環状化合物の合成およびその高分子材料への導入について検討を行った。その結果、反応をDMF希釈溶媒中条件で行い、二段階に分けて求核芳香族置換反応を行うことにより、目的とする光学活性大環状化合物およびその芳香族ポリケトン鎖への導入が達成された。
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