前年度に引き続き、耐熱性・耐薬品性に優れた芳香族ポリエーテルケトン鎖からなり、はしご状高分子の部分構造である二環性化合物および光学活性環状構造を主鎖に有する芳香族ポリケトンの合成研究を行った。 前者については、前年度の研究結果より環化段階における収率の低さおよび二環性化合物の有機溶媒への溶解性の低さが問題点として挙げられた。本年度はこれらの改善を目指し、軸構造の異なる二種類の二環性化介物の合成を検討した。まず、軸構造の主鎖および側鎖にそれぞれエーテル結合を導入した四官能性フルオロ化合物を5-ブロモイソフタル酸クロリドから二段階で合成した。次に、得られた二種類の四官能性フルオロ化合物の過剰量のモノオールとの求核芳香族置換反応、アリーレンジホウ酸との鈴木カップリング環化反応を順次行うことで、はしご状高分子の部分構造である二環性化合物を合成した。いずれもフレキシブルな構造であるエーテル単位を軸構造に導入したことで有機溶媒への溶解性の改善は見られた。しかし、鍵反応である環化反応の著しい収率の向上は見られず、重合体および不溶成分であるゲル化生成物が副生した。 後者については、前年度の検討より、光学活性環状構造〔空孔〕を主鎖に有する芳香族ポリケトンは得られたものの、十分高分子量体でなく、重合反応性の低いことが問題点として挙げられた。この低反応性は光学活性環状構造どうしの立体障害によるものと考え、本年度は、光学活性環状構造間に適度な分子・鎖長を有する芳香族ケトン単位を導入した芳香族ポリケトンの合成を検討した。芳香族ケトン単位として最も単純な構造であるベンゾフェノン単位を導入したときは、重合度の改善は全く見られなかったが、さらに分子鎖長を伸長した芳香族ケトン単位を導入することで重合度の改善が見られ、高分子量の光学活性環状構造を有する芳香族ポリケトンの合成が達成された。
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