研究概要 |
1)アゾカリックスアレン包接化合物への光照射に伴う包接挙動の定量 アゾカリックスアレンの包接化合物に光照射し,包接挙動の変化を定量した.ゲスト分子として,ピレンや8-アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸などのシクロデキストリンに包接されるような芳香族化合物を用いた.紫外-可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルにより,アゾベンゼン部の光異性化によりゲスト分子が放出可能であるかどうか,また,アゾベンゼン部の光異性化によって錯形成定数が顕著に変化するゲスト分子の構造的特徴について検討した.ただし,6つのアゾベンゼンを環状に結合したアゾカリックス[6]アレンでは,光定常状態に達するのに30時間以上必要であった.これは,アゾカリックス[6]アレン分子内のアゾベンゼン部位同士が互いに立体障害となり光異性化が困難であるためと考えた.そこで,6量体のうち一部のアゾベンゼンをフェニレンにしたアゾカリックス[6]アレンを新たに合成し,これにより包接能を保ったまま光応答性が向上することを明らかにした. 2)アゾカリックスアレンの高分子への固定化 製膜性および作製した膜の安定性の向上を目指して,アゾカリックスアレンを高分子に結合した高分子ホストの利用を検討した.アゾカリックスアレンおよび参照化合物としてのシクロデキストリンを高分子鎖に結合可能なモノマーを調製した.このモノマーは他の重合性モノマーの共重合によりアゾカリックスアレンを導入した高分子を合成することが可能である. 3)ゲスト放出量測定装置の立ち上げ 水晶発振子ミクロバランス測定法およびサイクリックボルタンメトリー用電気化学測定装置を購入した.平成19年度に薄膜状の包接化合物からのゲスト分子の放出現象を定量するための,測定条件を最適化するために,L-メントールとシクロデキストリンからなる包接化合物の粉体からのL-メントールを定量する手法を確立した.
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