研究概要 |
1.擬一次元空間で形成される自発的なゲルのパターン形成 1-(a)カラギーナン水溶液へカリウムイオンを拡散させた系 毛細管内に封入したκ-カラギーナンの水溶液にカリウムイオンを拡散させてゲルを調製したところ非常に単純なシステムであるが、液晶領域が周期的に局在したゲルが創製された(Narita, T.et al.Langmuir22,349-352(2006))この周期的な空間規則性はLiesegang現象の特徴を表しており、κ-カラギーナンとカリウムイオンの二成分だけを用いてLiesegang現象の特徴を持った液晶周期構造を自発的に形成できることが明らかになった。 1-(b)アルギン酸水溶液へカルシウムイオンを拡散させた系 同様にアルギン酸においてカラギーナン同様の実験を行ったところ、植物形態の一部に類似したゲルパターンを再現することに成功した。これらのパターンは、容易にチューブ型、セル型、螺旋方、筍形へと形態を制御することができた。パターン発展の傾向からこれらの形態の変化は、束縛空間での粘性摩擦と相分離に起因していることが示唆された。 2.擬二次元空間で形成される自発的なゲルのパターン形成 二次元空間でこれらのゲルを同様の方法によって調整したところ、リング状、縦縞、横縞等の空間パターンを自発的な方法によって形成させることができた。これらの特徴的な長さはポリマーの濃度によって段階的に変えることができた。これらの形状の違い及び特徴的な長さはゲル化と相分離の競合の違いによって生じることが実験結果から推測された。 3.ゲル化と相分離の競合に関する研究 上記に挙げたように、ゲル化と相分離の競合が強くパターン形成に関与していることが示唆されたため、基礎的な実験を行った。サンプルは寒天の主成分であるアガロースを用いた。寒天水溶液は温度の低下に伴いゲル化及び白濁することから下限臨界溶液温度持った。また、相分離が進行するとスピノダルリングが観察され、ゲル化によってこの過程がピニングされることが分かった。詳細な実験からスピノダル曲線を決定することができた。
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