プローブが協同的に形成する希土類金属イオンの発光に適した配位場に着目し、簡便なSNP解析法の開発を試みた。現在までに2種のプローブ、即ちEDTAとフェナンスロリン(phen)を末端に導入したDNAプローブ(金属捕捉プローブ、光増感プローブ)の協同的ハイブリダイゼーションを利用し、ターゲットDNA上の点変異の検出に成功している(両者がターゲットに結合した際、その修飾部位は互いに隣接するように設計されており、金属の配位場がそこで初めて形成される設計になっている)。 しかし、同検出系においてTb^<3+>イオンを用いた際の発光量子収率が3.3%、Eu^<3+>イオンで1.5%とさほど高い値ではなかった。そこで超微量分析に対応するためにも量子収率の向上に向けてより発光効率の良い光増感剤の探索を行った。その最低三重項エネルギー状態から、より良い光増感剤として機能すると考えたテトラアザトリフェニレン(tatp)並びにグルタミン酸-トリプトファンコンジュゲートを導入した新規光増感プローブの合成を行った。これらを用い、発光量子収率を求めようとしたが、予想と反し発光強度は極めて小さかった。 一般的に用いられているプローブの標的DNAへの結合安定性とその塩基配列特異性は表裏一体であり、結合安定性を向上させるためにプローブのODN部位を長くすると塩基選択性が低下する。そこで本検出法では、発光には効果的なミクロな場の形成が重要であるため、ミスマッチ塩基対部位を含むDNAに結合してもそのミスマッチ塩基対の存在でミクロな場が乱されるような系の構築に向けた検討を行った。つまり、プローブ長を伸ばし、相補的なDNAへの熱安定性を確保しながら、点変異を含むDNAとの差別化をできる可能性がある。実際、様々な位置にミスマッチ塩基対を導入しその発光強度を測定した結果、光増感剤の導入部根元にミスマッチが存在する場合、プローブが結合していても、その発光強度はフルマッチの場合と比較して、小さくなる事が判った(最大7分の1)。
|