本研究では、水酸基を有するコリンカチオン([N_<1.1.1.20H>])と有機アニオンであるビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド([NTf_2])を組み合わせて、新規プロトン伝導性プラスチッククリスタル材料を合成した。構造確認は、^1H NMR、元素分析、FAB-MSにより行った。DSC測定の結果、 [N_<1.1.1.20H>][NTf_2]は0℃と23℃に吸熱ピークを示した。23℃において融解することを目視によって観察し、融点であることを確認した。0℃の吸熱ピークは固体一固体転移であること、融解のエントロピーが十分に小さいことから、[N_<1.1.1.20H>][NTf_2]は新規イオン性プラスチッククリスタルであることがわかった。プロトン伝導性を評価するために、所定量の酸を添加して熱分析、粘度、及びイオン伝導度を測定した。酸添加量の増加に伴い、融点は消失し、-70℃程度のガラス転移温度のみを示した。粘度は、酸添加量の増加に伴い、単調に増加した。また、[N_<1.1.1.20H>] [NTf_2]単独のイオン伝導度は25℃において約10^<-3>Scm^<-1>の値を示したが、酸添加量の増加に伴い、イオン伝導度は単調に低下した。このような粘度とイオン伝導度の傾向は、コリンカチオンの水酸基とプロトンの相互作用に基づくと考えられる。そこで、^1H NMRを測定したところ、上記部位における水素結合の存在が示唆された。[N_<1.1.1.20H>][NTf_2]は酸を解離させる能力があることがわかった。
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