本研究では、昨年度得た新規プラスチッククリスタル材料であるコリン塩([N_<1.1.1.20H>][NTf_2])中におけるプロトン伝導機構について詳細な検討を行った。まず、ガラス製U字型セルを作製し、分極測定を行った。電極には、コイル状白金線を使用し、作用極に水素または窒素をバブルしながら測定を行った。窒素をバブルしながら分極測定を行った場合、1Vまで印加しても電流は全く流れなかった。一方、水素をバブルしながら分極測定を行った場合、印加電圧の増加に伴い電流値は上昇した。また、温度を室温から80℃の範囲で測定したところ、温度上昇にともない電流値が上昇した。また、磁場勾配NMRを用いて自己拡散係数の測定を行った。その結果、酸由来のプロトンがわずかではあるが、系中において最も速い拡散種であることがわかった。以上のことから、コリン塩はプロトン伝導体として機能することを明らかにした。コリン塩はカチオン側鎖に水酸基を一つ有する。より効率的なプロトン伝導パスを構築するため、水酸基数を四つ有する新規プロトン伝導体を合成した。イオン伝導度は、80℃において約10^<-3>S cm^<-1>であった。コリン塩よりもイオン伝導度が若干低下した。これは、水酸基同士の相互作用により系の粘度が増加したためである。しかし、酸添加に伴いイオン伝導度は増加し、酸濃度が33mol%で極大値を示した。以上の結果より、水酸基はプロトン輸送に効果的な官能基であることが示唆された。
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