本研究では、コリン塩([N_<1.1.1.2OH>][NTf_2])を用いて高分子電解質との複合化を行い、プロトン伝導性を評価した。また、室温を含む広い温度範囲において高プロトン伝導性を有する新規プラスチッククリスタル(PC)の開発を目的として、有機カチオンとリン酸二水素アニオンからなる化合物を合成し、特性評価を行った。まず、Nafion溶液に[N_<1.1.1.2OH>][NTf_2]を所定量添加し、ガラス基板上にキャストすることにより複合膜を作製した。複合膜の両側にカーボンペーパー電極をホットプレス(温度 : 120℃、圧力 : 1.0MPa、時間 : 1分間)し、膜電極接合体を作製した。これを燃料電池セルに設置し、室温、無加湿条件下において発電試験を行った。Nafion単独では全く発電しなかったのに対し、複合膜ではわずかに発電することがわかった。複合膜の開放電圧と限界電流密度は、それぞれ0.51Vと11mA cm^<-2>であった。一方、新規PC材料の開発を目的に、有機カチオンとしてピロリジニウムカチオンを用いた。エチルメチルピロリジニウムカチオンとリン酸二水素アニオンを組み合わせたとき、DSC測定において51℃に固相間転移を示したことから、新規PCであることが示唆された。イオン伝導度測定を行ったところ、転移温度前は10^<-7>S cm^<-1>程度であったのに対し、転移後はイオン伝導度のジャンプが観測され、約2桁程度急激に増加した。イオン構造の最適化を行うことで、さらなる改善が可能である。
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