今年度の研究においては、まず、現有の結晶成長炉に雰囲気圧力を自動で制御できるレギュレータを装備した。これにより、成長実験中の雰囲気圧力を一定に保つことができ、融液形状の制御が可能になった。その結果、減圧にしすぎると融液形状が上に凸にならず、80〜90kPaの圧力に保つと上に凸の形状になることがわかった。次に、以上の条件のもとで従来キャスト成長法と比較することで「中心凝固キャスト成長法」の優位性を実証した。冷却速度を一定にし、それぞれの方法でインゴットを成長させたのち、評価を行った。その結果、「中心凝固キャスト成長法」の結晶は従来法の結晶と比べて、結晶粒が大きい、電気的に不活性でキャリアの再結合サイトとならないΣ3粒界の割合が多い、抵抗率が高いなどの特徴がある。特に、Σ3粒界の割合については従来法の結晶が65%なのに対し、「中心凝固キャスト成長法」の結晶では90%以上であった。また、テクスチュア形成やパッシベーション等を含まない簡便なプロセスで太陽電池を試作し、太陽電池の変換効率を測定したところ、従来法の結晶が10%程度なのに対し、「中心凝固キャスト成長法」の結晶では12%と高いことがわかった。また、歩留まりの向上にも効果があることがわかった。従来法では、編析する不純物とるつぼから拡散してくる不純物のためにインゴットの底部と上部の特性が悪いことが知られており、本研究においてもその傾向が見られた。一方、「中心凝固キャスト成長法」の場合は、底部の結晶以外はほとんど同じような特性を示すことがわかった。また、結晶の底部以外は太陽電池の変換効率で従来法を上回っている。以上のことから、太陽電池用のシリコン結晶の作製において、「中心凝固キャスト成長法」は従来法に比べて優位性があることが実証された。
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