昨年度の研究で中心凝固キャスト成長法の優位性を実証した。変換効率が高い要因の一つに、結晶組織の違いが挙げられる。そこで、エレクトロルミネッセンスにより面内の特性分布を評価した。中心凝固キャスト成長法の結晶では暗線部がほとんど見られないのに対し、従来法の結晶では粒界部分に対応して暗線が見られた。また、太陽電池作製プロセスの一つにゲッタリングがあるが、ゲッタリング前後でキャリア拡散長を比較すると、従来法の結晶ではほとんど変化ないかやや減少するのに対し、中心凝固キャスト成長法の結晶では、約1.3倍になった。これは、中心凝固キャスト成長法の結晶では、ほとんどがΣ3粒界であるために結晶中の不純物が粒界に偏析せず、ゲッター層まで拡散するが、ランダム粒界を含む従来法の結晶では、不純物が粒界に偏析してしまうと考えられる。次に、冷却速度を系統的に変化させた結果、冷却速度が速すぎるとるつぼの壁から成長が起こってしまった。0.1〜0.5℃/minの範囲では、粒のサイズ、結晶粒方位にはあまり変化は見られなかった。一方、冷却速度が遅いほど抵抗率が高く、不純物が少ないことがわかった。冷却速度が遅い場合、成長時間が長くなるため、離型剤からの不純物混入を考慮する必要がある。そこで、拡散方程式を数値的に解くことで、Siバルク多結晶中の不純物分布を検討した結果、成長速度が遅いほど不純物濃度が小さいことがわかった。また、融液の上部中心付近から凝固を開始した場合でも、固液界面の広がり方によって結果が異なり、固液界面形状制御が重要であることが示唆された。これらの結晶の太陽電池特性を評価した結果、冷却速度が遅いほど、開放電圧は小さく、曲線因子は大きくなった。開放電圧に関しては、抵抗率が高いほど電圧が低い、ということから説明できる。曲線因子に関しては、電気的に不活性なΣ3粒界の割合が多いことが一つの要因と考えられる。
|