太陽電池は燃料を必要とせず、太陽光を照射するだけで半永久的に利用できるため、身近な電力源としての役割は大きい。太陽電池の効率は、禁制帯幅で決まる起電力と、禁制帯幅よりも大きなエネルギーをもつ太陽光を吸収して生成されるキャリアによる電流の積で決定される。両者の間にはトレードオフの関係があり、禁制帯幅が大きい材料では吸収できる光子数が少ないため電流がとれず、逆に電流を多くするためには禁制帯幅を小さくする必要がある。本研究では、高い起電力を保ち、かつ太陽光を有効に吸収できる半導体太陽電池材料として、半導体ZnTeO混晶の作製とその太陽電池への応用を目的としている。 分子線エピタキシー法によってZnTe(001)基板上にZnTeO混晶を作製した。O組成はO_2流量の制御により行った。X線回折測定により、作製したZnTeO混晶は閃亜鉛鉱構造であり、O組成は0.2%以下であることがわかった。ホトルミネセンス(PL)測定の結果、O組成が極めて小さい場合にはO原子が希薄であるため、孤立状態のO原子に束縛された励起子の発光が支配的であるのに対し、O組成を増加させるにつれて、複数のO原子(酸素クラスター)に起因すると思われる新たな発光が低エネルギー側に現れた。これらの発光はフォノンレプリカを伴う。このことからO原子が形成する局在準位のエネルギーを制御できることがわかった。さらに、光吸収測定においても、孤立酸素および酸素クラスターによる吸収が観測でき、PLスペクトルとゼロフォノンエネルギーが対応することがわかった。次に伝導制御のために、アクセプターであるNをドーピングしたZnTeO混晶を成長した。N供給量を最適化することによって、p型で10^<18>cm^<-3>のキャリア密度をもつ低抵抗エピタキシャル層が作製できた。これらの成果により、太陽電池を作製する上で重要な知見を得た。
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