太陽電池は燃料を必要とせず、太陽光を照射するだけで半永久的に利用できるため、身近な電力源としての役割は大きい。太陽電池の効率は、禁制帯幅で決まる起電力と、禁制帯幅よりも大きなエネルギーをもつ太陽光を吸収して生成されるキャリアによる電流の積で決定される。両者の間にはトレードオフの関係があり、禁制帯幅が大きい材料では吸収できる光子数が少ないため電流がとれず、逆に電流を多くするためには禁制帯幅を小さくする必要がある。本研究では、高い起電力を保ち、かつ太陽光を有効に吸収できる半導体太陽電池材料として、禁制帯中に中間バンドを有する半導体ZnTe0混晶の作製とその太陽電池への応用を目的としている。 ZnTe0は分子線エピタキシーも用いて、ZnTe基板上に成長した。理論的には0組成が2%においてZnTe0混晶の変換効率は最大の58%となるが、ZnTe0混晶を構成するZnTeとZn0は結晶構造や原子間距離が異なるため、0組成を増加させようとすると結晶性が悪化する。本研究ではZnTe基板の前処理方法を改善することによって0.2%を超える0組成でも優れた結晶性を維持させることができた。ZnTe0混晶を成長する際、活性窒素を添加するとp型の電気的特性をもつことがわかっている。そこでこのp型ZnTe0上にn型Zn0を成長し、ヘテロ構造型のpn接合を形成し、太陽電池を試作した。この太陽電池に様々な波長の光を照射しながら電圧-電流特性を調べた結果、禁制帯幅以下のエネルギーの光を照射しても電流が流れることがわかり、ZnTe0混晶は高効率太陽電池材料として利用可能であることを明らかにした。
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