平成18年度の研究実績は以下の通りである。 (1)LiMn_2O_4へのFe置換ドーピングと置換量制御 ゾルーゲル・スピンコーティング法を用い、シリコン基板上にFe置換LiMn_2O_4膜を作成した。通常のスピネル型LiMn_2O_4膜を作成する場合、酢酸リチウムおよび酢酸マンガンを原子数比1:2になるように計量しメチルアルコール中に溶解するが、本研究では、原材料である酢酸マンガンの一部を酢酸鉄に置き換えてゾル液を作成することによりLiMn_2O_4へのFe置換ドーピングと置換量の制御を図った。置換量は5%、10%、15%、20%である。これらの溶液にクエン酸を添加しゾル液を作成した。作成したゾル液をシリコン基板上にスピンコーティングし500℃、30分間焼成した。試料の結晶性および組成の評価には、薄膜用X線回折法、ラザフォード後方散乱法を用いた。試料の組成は概ね原材料の混合比と一致した。 (2)Fe置換量とヤーン・テラー格子歪抑制効果との相関性の解明 作成した試料に対し充放電実験を行った。なお、放電時、スピネル型LiMn_2O_4において、Li組成が20%増加するとヤーン・テラー効果による構造変化(立方晶から正方晶)が生じる。Fe置換LiMn_2O_4膜においては、置換量が多いほど構造変化が生じないことが明らかとなった。 (3)その他 ソーラーニュートリノ検出用固体シンチレータの候補材料であるLiInO_2のバンドギャップを光音響分光法により求めた。バンドギャップ値は4.1eVであり、光吸収法から求めた値とよい一致を示した。また、ZnOの結晶成長中に生じる欠陥やGaNの中性子線照射により生じる欠陥に関する研究を行った。
|