研究概要 |
ZnSe系II-VI族ワイドギャップ半導体による新光デバイス(青-緑レーザ/発光ダイオード,青-紫外線光検出器など)は、次世代マルチメディアシステムで必須となる高速大容量光ディスクシステム構築のキーデバイスとして期待されている。しかしながら、基板とZnSe系成長層との組み合わせから上記光デバイスの基板はn型GaAs,ZnSeに制約されており,上部電極コンタクト層にトンネル効果を利用した「超格子電極」を設ける必要がある。このような現在のデバイス構造においては、超格子電極に起因したレーザの素子劣化、光センサーの吸収損失といった重要な問題を抱えている。 本研究では、上述した技術課題を根本的に解決するために、成長界面に「共鳴トンネル超格子層」を導入するすることでp型GaAs基板結晶からp型ZnSe成長層への正孔注入障壁低減し、素子構造を反転させた。本技術の確立により、現在までp型基板上では実現し得なかった新規デバイス構造の採用が可能となり、以下のデバイスへ応用して素子性能の向上を図った。 1.ZnSSe系PIN型光検出器:200Åオーダーの極薄膜n型窓層による上部吸収損失の低減により、特に紫外(300nm帯)受光感度の向上(>30%)を実現した。また、界面超格子層での転位の吸収による暗電流低減(〜10^<-13>A/mm^2)を実現し、光検出能の向上に成功した。 2.ZnSSe系アバランシェフォトダイオード:正孔注入型APDの実現とスピン-軌道相互作用分裂バンドの利用による紫外光の増倍率向上を実現した。また、界面超格子層による暗電流低減によりAPD動作直前の暗電流を従来のn型GaAs基板上素子より2桁低減することに成功した。 3.ZnSSe:Te/ZnMgSSeダブルヘテロ構造緑色発光ダイオード:デバイス上部の光吸収損失低減により、外部発光効率が従来のn型GaAs基板上素子に比べて3倍向上した。
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