研究概要 |
マイクロラビング処理法により作製した液晶回折格子の投射型表示素子への適用を目指して, 液晶回折格子の光学特性の向上に関する試みがなされた。すなわち, 回折効率のレベル(位相分布を階段状に近似したときのステップ数)および格子周期依存性の実験結果より, 高い回折効率が得られるラビングパターンについて考察した。まず, 回折効率のレベル依存性は, 通常の回折格子における理論式と概ね一致することが分かった。このとき, 低いレベルにおいて理論値を上回る回折効率が得られる場合があることも確認された。次に, 回折効率は格子周期が狭くなり10μm以下になると急激に減少することが分かった。これは格子周期が狭くなると一周期あたりのディスクリネーション幅の割合が相対的に増すために, 有効的に利用される入射光の割合が減少することが原因であると考えられる。このことを解決するために, 回折格子領域の上下の領域に新たなマイクロラビングパターンを付与した。その結果,付与したパターンによってディスクリネーションの発生が抑制され, 回折効率が大幅に改善されることが明らかとなった。なお, 本研究においてはこの液晶回折格子の応答特性を考察するには至らなかった。 次に, マイクロラビング処理を大面積の液晶配向処理法として昇華させるための試みを行った。すなわち, 垂直配向膜に部分的なマイクロラビング処理を適用することによって, マルチドメイン垂直配向モード液晶セルにおける電圧印加時の液晶ダイレクタの向きを制御することを試みた。このとき, セル全体に渡って密にマイクロラビング処理を施す必要はなく, 50μm間隔でラビングすることによって隙間領域のダイレクタの向きを制御できることが明らかとなった。一枚の液晶パネルにおいてマイクロラビング処理に要する時間が短いため, 今回の試行が将来の大面積配向処理に向けての重要な布石となったものと考えられる。
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