研究概要 |
本研究課題では、室温強磁性n型半導体であるCoドープTiO_2をp型半導体基板上にヘテロエピタキシャル成長させたヘテロpn接合を利用したスピントロニクスデバイスの開発に取り組んでいる。具体的には、CoドーブTiO_2薄膜を光エレクトロニクスのキー材料であるp型GaN上に作製し、代表的な光スピントロニクスデバイスの一つであるスピンLEDを実現することを試みている。 平成18年度の研究成果は以下のとおりである。なお、当初計画していたinsitu光電子分光測定に関しては、XPS, UPS測定装置の立ち上げが完了しなかったため、平成19年度に延期する。 1.ヘテロLED構造の作製と発光特性の評価 パルスレーザー蒸着(PLD)法により円柱状のCoドーブTiO_2パターンをp型GaN(MgドープGaN)基板上に成長し、リフトオフ法によって電極を形成したLED構造を作製した。作製したLED構造のI-V特性を評価したところ明らかな非線形がみられた。さらに、約4mAの順方向電流を流すことでp-GaN層を青色発光させることに成功した。 発光スペクトルを詳細に検討した結果、観測された発光はMg添加により生じた深いアクセプタ準位を介した発光が支配的であり、スピンLED動作に必要なバンド間遷移による発光強度は非常に弱いことがわかった。ここから、スピンLEDの実現には単純なヘテロpn接合ではなく、CoドーブTiO_2とp型CaNの間に発光層をサンドイッチした三層構造が必要であるという指針を得た。 2.p型GaN基板上へのZnO薄膜成長 1.の結果をうけて、発光層としてZnOを用いた三層構造LEDの作製を着想した。現在は、平坦かつ高品質な(不純物準位を介した発光の少ない)ZnO薄膜の最適成長条件の探索に取り組んでいる。
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