研究概要 |
携帯電子デバイスの低消費電力化・省待機電力化に対応するため,MOSFETにおけるゲートリーク電流低減は重要な課題である.素子微細化に伴いゲートスタック構造における高誘電率(High-k)絶縁膜組成やHigh-k絶縁膜/反転層界面構造の原子レベル分析は極めて困難になる.本研究では,原子レベルでモデル化されたゲートスタックのリーク特性予測のための計算化学的手法の開発を目的として,研究代表者が開発してきた量子分子動力学法,グランドカノニカルモンテカルロ法,古典分子動力学法などを統合化しリーク特性予測への適用可能性を検証する.平成18年度は(1)電気伝導度を予測するモンテカルロ法の開発,(2)統合的計算化学手法のための各種計算化学プログラム間のインターフェース開発を行った.(1)については,量子分子動力学法により得られた電子の存在確率密度分布をモンテカルロ法に適用することで電気伝導度に相当する量を計算するシミュレータの開発に成功した.開発した電気伝導度シミュレータをSi/SiO_2/Si界面モデルに適用し平成18年度秋季応用物理学会にて発表した.この他に多様な材料に応用することにも成功した.また(2)については,原子レベルでのモデルを3次元格子に転換し電子の確率密度分布を量子分子動力学プログラムで得た波動関数情報から計算するプログラムDENSの開発に成功し,(1)の各種材料における電気伝導度計算にすでに応用している.また予想外の成果として,複雑な系の電子状態計算の収束性をより高めるためのアルゴリズムの開発と量子分子動力学法への実装および応用についても成功した.この成果は来年度の計算対象としての必要性が高まっているHigh-k絶縁膜材料に応用可能と考えられる.
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