C_<60>やペンタセンをはじめとする有機薄膜やSiやAgをはじめとする無機薄膜の構造及び電気伝導度、さらにそれらの共蒸着混合薄膜における有機-金属界面での新奇物性発現およびその解明を目的として研究を行った。まず、有機電界効果トランジスタ(OFET)のチャネル材料として最も応用が期待されているペンタセン分子が、OFET特性向上に欠かせない自己組織化膜(SAM)表面上において自発的に凝集することを見出し、このペンタセン分子の自発的凝集は基板とペンタセン薄膜との表面エネルギのバランスによって引き起こされるというメカニズムを、低速電子顕微鏡(LEEM)を用いて明らかにした。さらにin situ原子間力顕微鏡(AFM)とFET測定システムを構築し、この現象がFETの性能を著しい影響を与えることを明らかにした。この自発的凝集は、OFETを実用化するに当たって最大の問題となっている不安定性・低再現性の主要な原因の一つであると考えられ、基礎応用両面から重要な結果である。また昨年度までに開発した温度可変マイクロ4端子プローブ伝導度測定システムを用いて、特にSilico-on-Insulator(SOI)の表面準位による電気伝導のメカニズムの解明を試みた。SOIは全てのキャリアがSiO_2との界面準位にトラップされるにもかかわらず、電気伝導特性を示すことが知られている。このSOIの電気伝導度の温度依存性を4端子プローブを用いて測定し、表面準位が金属的伝導特性を示す可能性を見出した。さらにin situ有機無機複合薄膜の原子レベル解析に必要となる高性能プローブ開発のために、AFMの開発者であるGerber教授の研究室(スイス・バーゼル大学)にてピエゾ抵抗読み取り方式の次世代プローブ開発研究を行い、従来のレーザー読み取り方式を凌ぐ性能を実証することに成功した。
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