平成18年度は、以下の2項目について検討した。 (1)任意形状電極の3次元形状とプラズマ状態の関係 本研究で提案している生体医療器具用プラズマプロセスの電極は、対象物の形状に適合するように、粒状導電性物質を用いて作製した(以下、任意形状電極と記す)。本手法の最大の特徴は、血液ポンプやバルーンカテーテルのように、従来の手法では電極の設置が困難な対象物に対しても、適用可能となる点である。本研究では、この任意形状電極により生成した高周波プラズマについて、電極形状に対するプラズマ状態を観察し、Langmuirプローブ法によるプラズマ診断を行なった。診断では、プラズマの生成条件である高周波電力およびプラズマ生成中のガス圧力を可変させながらデータ収集を図り、任意形状電極の3次元形状とプラズマ状態の関係を明らかにした。なお、プラズマによるプローブ先端の汚染を防ぐために、プラズマ状態の観測は、今回はヘリウム(He)プラズマ中で行なった。 (2)膜質の均一性と成膜中のプラズマ状態との関係 前述(1)の結果を基に、血液ポンプに対応した任意形状電極を用いた高周波プラズマCVD法により、血液ポンプのダイアフラム表面部分へa-C : H膜を形成した。実際に形成されたa-C : H膜について、膜厚分布および膜質の物性評価から、ダイアフラム部分へ形成されたa-C : H膜の均一性について検討し、均一形成条件の最適化を検討した。そして、前述(1)のプラズマ診断の結果と、実際に形成されたa-C : H膜の均一性評価から任意形状電極の有効性について議論し、血液ポンプ(任意形状の3次元構造物)に対応したa-C:H膜の薄膜形成技術(プラズマプロセス)を確立した。
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