有機シラン分子の自己組織化単分子膜を用いた表面修飾を利用した無電解めっきにより、ULSI内部配線用の銅拡散バリア層の形成を目指して研究を行って来た。近年のULSI内部配線の微細化に伴い、バリア層の厚さも更なる薄膜化が求められているため、本研究ではPdイオンによる触媒化の条件を見直し、現在得られているものよりもはるかに薄く均一な無電解めっき皮膜を得ることを目的として研究を行ってきた。 Pdイオンによる触媒化を行ったときの、有機単分子膜上のアミノ基の状態に関する情報を得るため、多孔質シリコン基板上に有機単分子膜を成膜し、透過フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により調べた。ここでは、基板として比表面積の大きい多孔質シリコンを用いることで、透過法による測定が可能となることを期待し、このような検討を行った。しかし、実際に得られた結果からは、有機単分子膜由来の各種振動ピークが見られたものの、アミノ基に関しては明確な情報を得ることは出来なかった。もともと、アミノ基の吸収自体がシャープなピークを表すものではなかったために有意な情報を得ることが出来なかったと考えられる。 一方、従来用いている3-aminopropyltriethoxysilane(APTES)の代わりに、Pdイオンを吸着するサイトを分子内に多く持つ有機分子を用いた検討を行った。ここで用いた3-[2-(2-Aminoethylamino)ethylamino]propyltrimethoxysilane(TAMS)は分子内に窒素原子を3つ有する有機シラン分子である。その結果、TAMSを用いた場合には、基板に付与されるPdイオンの数がAPTESを用いた場合よりも数倍多くなることがXPSによる表面分析により確認された。さらに、NiBめっきを行った結果、10nm以下の膜厚においても非常に緻密なめっき皮膜を得ることに成功した。
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