平成18年度は、ホローコアフォトニック結晶ファイバーを用いた新規波長変換デバイスを実現するために、上記ファイバーを用いた基本実験系の構築と連続発振光を励起光源とした誘導ラマン散乱の観測を行った。その結果、下記に示す基礎的な研究成果を得た。 1.ホローコアフォトニック結晶ファイバーに気体媒質を高圧力で充填し、かつレーザー光を高い効率でカップリングさせるための新規ファイバーセルの設計と作製を行った。最大で80%を超える高い結合効率と、20気圧の高圧力気体を充填できる新規デバイスを実現した。 2.上記した新規ファイバーセルと高フィネス共振器連続発振ラマンレーザーを組み合わせた、誘導ラマン散乱ゲイン計測のための光学系を構築した。このシステムは高フィネス共振器のPDH法によるフィードバック制御によって、長時間にわたって安定した計測を行うことが可能である。 3.高フィネス共振器連続発振ラマンレーザーから出力された水素の回転ストークス光(波長835nm)をシード光とし、波長800nmポンプ光(200mW)と同時に水素を充填したファイバーセルへ結合させることによって、ホローコアフォトニック結晶ファイバー中での連続発振光励起による誘導ラマン増幅の観測に初めて成功した。 4.ホローコアフォトニック結晶ファイバー中での誘導ラマン増幅現象に関する理論的予測を行い、実験結果との比較を行った。予測と実験結果のずれは、セル中に充填された気体ガスの不均一性に起因することを明らかにした。 5.上記条件において、励起光およびシード光の偏光をそれぞれ変化させ、誘導ラマンゲインの偏光依存性を測定した。理論的に予測される結果に従った誘導ラマン増幅の変化を初めて観測した。
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