平成19年度は、ホローコアフォトニック結晶ファイバーを用いた新規波長変換デバイスを実現するために、その基礎となる高フィネス共振器内でのラマン相互作用に関する研究を行った。これによって、新しい連続光波波長変換の手法を実現し、波長変換のみならず、分子変調を利用した新しい変調素子、モード同期パルス列発生装置への基礎を築いた。以下に得られた成果の概要を記述する。 1.ホローコアフォトニック結晶ファイバー中での連続光波と高フィネス共振器中での連続光波のラマン相互作用について、共通する物理過程について比較検討を行った。高フィネス共振器中でのラマン共鳴四光波混合を記述するモデルを構築した。 2.水素を充填した分散補償型高フィネス共振器に近赤外連続発振励起光を結合させた上で、Xeガスとの混合によって、共振器内分散を実質的にゼロに制御し、共振器内四光波混合過程の位相整合条件の飛躍的改善に成功した。その結果、従来法に対してアップコンバージョン効率を3桁以上向上させた。 3.この位相整合された状態を、共振器内分散は同一であるが圧力の異なる複数の条件において実現し、共振器内分散の制御が四光波混合の高効率化をもたらしていることを実証した。 4.励起光・1次ストークス光・2次ストークス光および1次反ストークス光の共振器透過パワーの共振器内蓄積パワーに対する依存性を測定し、1において構築したモデルに良く一致することを明らかにした。これにより、共振器内では、小信号領域を超えた領域で四光波混合が起こっていることが明らかになった。これは、連続光波領域では初めての成果である。 5.上述した、共振器内ラマン共鳴四光波混合をホローコアフォトニック結晶ファイバー中で実現するための、設計指針と条件を検討し、現状入手可能な光源による実現可能性を明らかにした。
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