低コヒーレンス動的光散乱法は、散乱体が時間的にゆらいでいる媒質内の微小領域での媒質の動的情報を計測する方法であり、高密度のナノ微粒子計測のみでなく、生体組織、細胞、植物、高分子ゲルなど幅広い測定対象を有する。さらに、本方法を散乱媒質中の動的情報3次元断層像計測へ拡張することで、動的光散乱顕微鏡、動的光散乱継層画像計測へと発展し、生体、細胞、植物などに対する静的情報計測(形状、構造計測)と同時に、動的情報(分子の動き、細胞の活動)の可視化が可能となる。 本研究では、まず低コヒーレンス動的光散乱測定システムの高感度化を行った。その結果、粒子径100nm程度、体積濃度10%の高濃度ナノ粒子の動的情報を測定可能であることを確認した。また、低コヒーレンス動的光散乱測定システムを用いて、高濃度粒子の粒子間相互作用の測定を行った。粒子の濃度を変化させ粒子の拡散係数を測定した結果、理論的予測とよく一致する拡散係数の濃度依存性を得ることができ、低コヒーレンス動的光散乱測定システムが高精度に高濃度ナノ粒子の動的情報を測定可能であることを示した。 また、固体と液体の界面近傍での高濃度ナノ粒子の拡散係数の測定も行った。測定した界面からの距離に対する拡散係数の変化は、理論予測とよく一致した。その結果、低コヒーレンス動的光散乱測定システムを用いた動的情報の継層画像化が可能であることを示した。また、光路長を長くした場合の拡散係数の測定を行い、多重散乱光の影響で拡散係数が変化することも示し、さらに、数値シミュレーションとの比較を行い、それらの結果はよく一致した。 さらに、低コヒーレンス動的光散乱法を用いた散乱媒質の散乱係数・吸収係数測定法の提案も行った。
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