研究概要 |
超音波変調光計測法に分光計測法を導入し,生体組織深部の分光情報を高い空間分解能で観察するための装置の試作および物理現象の解明の基礎研究を進めてきた。本研究では研究代表者がこれまでに構築してきた同軸反射型超音波変調光計測装置に,ラインCCD型光ファイバー分光器を組み込んで改良した。この分光器の応答速度は遅く,パルス超音波の実時間変化に追従できないので,露光状態のCCDにパルス光を同期させて光照射するストロボ撮影法を用いた。パルス光には,生体分光に適した760nm〜860nmの波長帯域を有するフェムト秒チタンサファイアレーザーを使用した。このパルスレーザー光の繰り返し周波数は80MHzであるので,生体試料内部でパルス超音波間の干渉を抑制するために,電気光学素子で構成されたパルスセレクターで繰り返し周波数を6.6kHzに分周した。試料走査や同期調整はすべてコンピューターにて制御しており,システムとして可動した。ヘモグロビンを内包した生体模倣試料に対する超音波変調分光信号を評価すると,反射光が微弱であることやパルス光の強度と波長に時間的揺らぎによって,計測信号の安定性が不十分であった。また,試作装置のパルスの分周率と電気光学素子の消光比の関係からS/Nが低く,電気光学素子の直後に新たな偏向素子の配置などS/N向上のために装置改良が必要であることがわかった。本年度内に基礎データ計測をすべて試みる予定であったが,困難な状況であった。また,実験に平行して,位相効果を導入したモンテカルロシミュレーションによる数値解析的な検討も着手し,光子の反射効率や吸収係数依存性,非等方散乱因子依存性について検討した。
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