本研究は、単一の水晶デバイスとして三軸全ての角速度を検出可能な振動ジャイロ・デバイスの実現を目指すものである。本センサは、三回対称構造で四つの振動モードを縮退して用いる比較的複雑な多重モード振動子である。本年度は次のように主に構造解析と試作振動子の評価を実施し、その結果から構造改良を行って、より優れた駆動特性の振動子構造を得た。 1.デバイス用振動子の構造検討と試作デバイスの評価 ・FEMを用いた構造解析および動作シミュレーションを実施して、基本となる振動子の設計を行った。 ・エッチングによりデバイスの試作を行い、その評価より大きく次の二点の問題点を明らかにした。 (a)エッチング残渣について 構造対称性を必要とするにもかかわらず、エッチング残渣によって振動子は非対称な構造であり、この状態では振動重心ずれによるモード結合などによって特性劣化が生じる。 (b)駆動インピーダンスについて 大気中での駆動インピーダンスが数MΩと高く、真空中においてさえ1MΩ程度であり、自励振駆動回路の設計が非常に困難な条件であった。 2.構造改良による問題点の解決 初期検討デバイスの問題点を解決する為に振動子の改良を行った。コスト等の影響からエッチング残渣を完全に除去するのは困難であるから、残渣構造の包有を前提とした対称形振動子の再設計を行った。加えて、駆動インピーダンスの低下の為、駆動梁部端に穿孔して剛性低下ならびに平行電極の導入を行った。 結果として、エッチング残渣を含み三回対称ならびに駆動・検出軸に関する左右対称性を改善し、さらに駆動インピーダンスは大気中であっても130kΩ程度と自励振駆動が十分現実的な値まで低下させる事が出来た。
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