研究課題
本研究は、単一の水晶デバイスとして三軸全ての角速度を検出可能な振動ジャイロ・デバイスの実現を目指すものである。本センサは三回対称構造で四つの振動モードを縮退して用いる比較的複雑な多重モード振動子である。このように複雑な多重モード縮退振動子を利用する場合、支持や温度変化によって各振動モードの共振周波数やモード間結合などの諸状態が変化する。現実的にそのような影響を完全に取り除く事は出来ない。従って実用上はそのような種々の変化に対応できる信号処理方式が必要となる。これまで単純な構成のセンサデバイスでは温度変化に対してサーミスタ等のアナログ素子を用いて感度補正が検討されてきたが、多重モード振動子では補正量が多いためDSP等を用いて比較的複雑な信号処理を必要とする。始めに有限要素法を用いてセンサ出力のシミュレーションを行った。エッチング残渣など極力実際のデバイスに近いモデルを用いて、温度変化が生じた際の各温度における出力電荷を得た。さらには外乱として影響が大きい加速度によって発生する電荷量も合わせて解析した。このシミュレーションデータを用いて、印加回転角速度、外乱としての加速度、また温度を入カパラメータ、6つの端子電荷を出力としたセンサ信号のマトりクスを構成した。これから最終的に三軸の回転角速度成分である3つの出力信号を取り出すために、重み付け加算による信号処理系を設計した。解析で得られた電荷出力と入力条件、また理想出力値をパラメータとして与え、これより逆行列を求める手法により、温度の関数となる信号調整行列を得た。以上の手法により、適切に加速度影響が除外されると共に、温度変化による出力誤差を0.03%以下に抑えられるとの解析結果を得た。
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Japanese Journal of Applied Physics No.7B, Vol.46
ページ: 4709-4713
MATERIAL STAGE Vol.7,No.7
ページ: 4-8