本プロジェクト初年度にあたる平成18年度では、磁場中電気泳動堆積を利用した熱電素子の作製に向けた基礎的な研究を進めてきた。すなわち、p型材料であるCa_3Co_4O_9およびn型材料であるCa_<0.9>La_<0.1>MnO_3の成膜条件の最適化および単層膜の機能向上である。まず、電気泳動堆積用スラリーの作製条件を進め、分散媒としてエタノール、リン酸エステル系の分散剤を利用することでp型n型の両方スラリー化・電気泳動成膜が可能となった。また、層状構造をもち常磁性のc軸磁気異方性を有するCa_3Co_4O_9に対して磁場中で成膜を行い、磁場方向を応じた配向制御が可能であることがわかった。本研究により20mm×20mm×2mm程度の厚膜が得られ、これらの単層膜を適切な熱処理を行うことで(配向)バルク体と同等の熱電性能が得られた。さらに、これらの熱電層を絶縁層(アルミナ)でサンドイッチした多層膜型の熱電素子の作製も試み、印加電場・成膜時間の最適化により5層構造(アルミナ/p型配向Ca_3Co_4O_9層/アルミナ/n型Ca_<0.9>La_<0.1>MnO_3層/アルミナ)を形成させることに成功した。ホットプレス法での緻密化の後、5mm角程度に切り出したチップの熱電特性を評価したが、バルクー対の出力密度に比べ一桁低い値にとどまる。組織観察からn型層がポーラスであり、多層膜の緻密化条件がn型材料よりも250〜300℃も低いp型層に合わせたため、n型層の焼結が進んでいないことが理由として挙げられる。
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