本研究では、テーブルトップサイズのX線マイクロビーム照射装置を用いて、神経細胞アレイを製作する。 一般に、神経培養細胞PC12は、細胞培地に神経成長因子(NGF)薬剤を投与することによって、神経突起を成長させることができる。また、PC12細胞はNGF薬剤無しの条件でも、γ線照射によって分化することを確認した。放射線に伴うラジカルがNGFと類似した機能として働き、適量線量の放射線照射では、DNA損傷の自己修復機能が働くために、細胞障害への影響は小さいと考えられる。 次に、半導体用マイクロ加工技術を用いて細胞チップを開発した。細胞チップは、フォトリソグラフィー技術を用いてガラス基板上に、高厚フォトレジストで深さ35μmのマイクロピット、マイクロチャンネルを形成した。マイクロピット間には、神経突起の伸長を誘導するためのマイクロチャンネルが形成されている。細胞チップは、洗浄、滅菌、コラーゲンコート等の処理を施した後、実際に培養細胞を細胞チップ内で培養し、その健全性について調べた。 細胞チップ内でPC12細胞を培養し、さらに適量線量のX線マイクロビームで分化制御を行うことで、人工配列の神経回路を形成する。現在、X線マイクロビームを用いて、単一のPC12培養細胞の分化制御に成功している。X線マイクロビームによるPC12細胞の分化形成では、通常に比べて神経伝達の入力樹状突起(神経突起)の成長が小さいことが特徴的で、マイクロサイズの溝で、PC12細胞の分化を行った場合、索軸(神経突起)は溝に沿って伸長することが判った。
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