研究概要 |
本研究は,金属開口アレイにおける共鳴透過現象(透過スペクトルに急峻な透過ピークが観測される現象)を用いることによって,高感度な微量成分センシングシステムを実現しようとする.そこで,本年度ではまず,金属開口アレイの光学特性を正確に把握し,その特性が発現するメカニズムを詳細に調べた.その結果,テラヘルツ表面波は金属表面からおよそ半波長程度の空間に局在していることがわかった.つまりセンシング対象の試料を,金属表面からおよそ半波長程度の範囲に配置する必要がある.その後,上述した金属開口アレイの光学特性を微量成分センシングシステムに応用するため,それぞれのデバイス構造の最適化を行った.各デバイスの最適化の目標は,金属表面に励起されるテラヘルツ光の局在電場強度を最大にすること及び,表面波の寿命の最長化である.その際,実際の実験とともに,シミュレーションの手法を併用した.シミュレーションは有限差分時間領域法を採用し,そのシミュレーションソフトの製作を行った.シミュレーションにより,各構造パラメータを変化させたときの光学特性の変化をある程度予測することができ,共鳴透過ピークのQ値が最も大きくなるパラメータを見いだした.そのパラメータをもって複数の周波数にピーク周波数を持つ金属開口アレイを作製し,所望の特性を満たしていることをテラヘルツ時間領域分光システムにより確認した.それらの金属開口アレイを用いて,紙面上に印刷したインクのセンシングを行い,良好なセンシングが可能であることを確認した.
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