研究概要 |
本年度は,磁場下での,血流中の赤血球の配向分布,レオロジー特性,および,凝集構造を調べるために,強磁性コロイド分散系での解析手法を応用することを目的のひとつとしていた.これまでに,強磁性コロイド分散系の解析のために我々が構築していた計算力学的アルゴリズムを,血流中の赤血球の挙動を解析するためのプログラムとして実行する際には,計算上の深刻な問題が発生することが明らかになった.問題発生の理由としては,初等的なミスによるのではなく,我々のアルゴリズムにおいては,実際上,計算機が有限精度で処理をするために,数値誤差にともなう例外事態が頻繁に起こり,条件によってさまざまな不適切な振舞が発生することが明らかになった.この問題は,対象とする系が複雑になればなるほど深刻である.ゆえに,この問題を解決することが急務となった.そこで,本年度では,強磁性棒状粒子からなるコロイド分散系を対象にして,粒子の挙動を,可能な限り,数値的にではなく,理論解析的に取り扱うことを試みた.その結果,希釈系,および,非希釈系ともに,せん断流中において磁場をうける強磁性棒状粒子の配向分布とレオロジー特性について,解析的に基礎的な知見を得ることができた.特に,定常状態の配向分布を得るためには,物理的な条件が存在することを発見し,その条件を導いたことは,強磁性コロイド分散系の工学的応用上においても重要であると考えられる.また,本研究課題においては,計算コストの低減や,アルゴリズムの信頼性向上への応用といった点において意義深いものとなった.さらに,本年度は,ヘルスモニタリングを視野にいれ,脈波解析のために必要となる解析アルゴリズムについて検討を行った.
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