研究概要 |
本研究の目的は, 1. 強磁性コロイド分散系での計算力学的解析手法を応用して, これまで実験によって調べられている赤血球の特性を再現する数理モデルを作り, 血流中の赤血球の配向分布, レオロジー特性および凝集構造を調べ, 種々の赤血球の特性が発現するメカニズムを数理的に明らかにすること, 2. 赤血球の生化学的反応も数理的にとりこんだ, より包括的で普遍的な, 血流中の赤血球の力学的特性を解析するための標準となる数理モデルを構築すること, 3. 構築した数理モデルをもとにして, シミュレータの開発やヘルスモニタリング技術開発のために応用していくこと, である. 本年度は, 第二番目と第三番目の目的に焦点をしぼり, ヘルスモニタリング技術開発に応用していくための包括的な数理モデルを構築することを目指して研究を遂行した.そのひとつとして, 動脈硬化や動脈瘤など, 血管壁の形態や力学的性質が, 正常部と比べて不均一に分布している部位を, 力学的観点から, 血管の不均一部として一般化して捉えることにより, 血管に生じた不均一部が脈波に及ぼす影響を, 力学的観点から広く明らかにすることを行った. この研究では, 不均一性は, 本質的に, 二つのパラメータによって記述できることを明らかにした. さらに, 不均一部を通過する脈波の振幅と速度, および, 不均一部にて発生する反射波に変化をもたらす要因を明らかにした. 脈波が不均一部を通過する際に生じる変化は, 七つの場合に分類できることを明らかにし, 各場合が実現される条件を具体的に示した. これらのことにより, ヘルスモニタリング技術開発への応用に向けた有用な基礎的知見を得ることができた.研究成果は, 講演ならびに論文として発表した.
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