研究概要 |
塑性発熱を考慮した熱・構造連成マルチスケール解析手法の開発を目的として,本年度は通常の連続体力学(シングルスケール)の枠組みで基礎的な検討を行った. 古典的な塑性力学において塑性散逸エネルギーと評価される,塑性変形に伴うエネルギー損失が全て熱エネルギーに変換されるものと仮定して,塑性発熱に関する力学モデルの定式化を行った.このような定式化を行うことで,弾塑性体に対する構造解析と非定常熱伝導解析とがエネルギー保存則を介して関連づけられ,「塑性発熱を考慮した熱・構造連成問題」を設定することが可能となった.この支配方程式を有限要素法により解析するプログラムを作成し,このような連成問題における時間項の取扱いについての検討を行うとともに,エネルギー収支や数値解の収束性の観点から作成した数値解析プログラム及び解析アルゴリズムの妥当性を確認した. さらに,従来の連続体力学の枠組みで構築した支配方程式に対して,一般的な均質化法の手続きに従ってミクロスケール・マクロスケールを導入し,その2変数を関連づけるパラメータの極限操作により「塑性発熱を考慮したマルチスケール境界値問題」を導出した.形式的なマルチスケール問題の導出は終了し定常問題に対するマルチスケール連成問題の定式化は完成したものの,ミクロスケールとマクロスケールでの時間項(時間積分)の取扱いに関して不明瞭な点が多く,非定常問題に対する定式化に関して詳細な検討を行っている.
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