研究概要 |
本研究の目的である非定常雑音に埋もれた信号の検出に先立ち,初年度は,非定常雑音のモデル化とそのモデルパラメータの同定方法を開発し,非定常過程の定常化手法を提案した.その提案手法は (1)非定常観測データのもつ時間-スペクトルの推定 (2)(1)で得られた時変スペクトルからの非定常雑音のモデルパラメータの導出 (3)非定常モデルおよびモデルパラメータを用いた観測データの定常白色化 といった手順で行い,非定常雑音モデルとしては時変パラメータを持つ伊藤型確率微分方程式を採用した.また(1)では物理的意味を無理なく表現していることで知られているPriestreyが提案した時変スペクトル理論を基に開発した. 開発した手法を用いることによって,非定常雑音に埋もれた信号の検出およびパラメータ同定問題は,従来の定常雑音としての問題に置き換えることが出来る.このことより本手法を用いた応用として,既に提案している時間周波数解析のひとつであるウィグナー分布関数を用いた信号の検出およびパラメータ同定手法を開発した.またレーダーや通信分野における信号で重要な遅れ時間および周波数パラメータの推定に適用させ,シミュレーション実験により提案手法の有効性の確認を行い,その成果を3件の論文により発表した.さらに,より多くの非定常雑音を扱えるようにし,また非定常観測データの定常化についての精度を向上させるため,非定常雑音の一般的なモデルの構築と定常化操作について開発を進め,平成19年度に論文発表を予定している.
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